UIデザイナーがフリーランスに転身するには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。
屋号の決定やホームページ、ポートフォリオ、名刺の準備、そして開業資金の確保。さらに、開業届の提出や見積書、請求書のテンプレートの用意も必要です。
そこで、UIデザイナーがフリーランスになる際に知っておきたいポイントをまとめました。
本記事では、UIデザイナーがフリーランスになるための手順や開業資金の調達、必要書類について詳しくご紹介します。
1. 屋号
屋号とは、フリーランスが個人名以外で仕事をするときに持てる名前です。屋号で事業内容が分かるため、氏名よりアピール力があり、信頼感を得やすくなります。
屋号を付けるときに、ポイントは3つあります。
- どんな事業をしているか、わかりやすくする
- 読みやすい名前にする
- 他社の商標とかぶらないようにする
有名な事務所やブランドと類似の名前や、他社の商標と似た屋号を付けた場合には、屋号の使用を差し止められる場合もあります。
そこで、屋号を検討する段階で、事前に商標をチェックできる特許情報プラットフォームで確認をします。
◆ 特許情報プラットフォーム
独立行政法人の工業所有権情報・研修館が提供するサービスで、自分の考えている屋号を入力して、検索ボタンを押すと、類似の商標を確認できます。
2. 作業環境
UIデザイナーがフリーランスとして独立する前に、作業環境を準備します。用意しておきたい機材や事務用品は7つあります。
- パソコン
- ソフトウェア
- インターネット回線
- 電話
- Fax
- 文房具
- 印鑑
フリーランスとして活動するには、電話やインターネット回線は必須ですが、工夫をすることで費用は削減できます。
とくに、インターネット回線については、データー量無制限のモバイルWi-Fiを導入することで、固定のインターネット回線のような工事をしなくても、作業環境を整えられます。
また、電話は格安SIMのスマートフォンを使うことで、月額料金を抑えられます。同様に、FaxもインターネットFAXを利用することで、機材などを買わずにFAX環境を整えられます。
格安SIMについては、以下の記事を参考にしてください。
【参考記事】 ・ 格安SIM(スマホ)オススメ60社比較ランキング!どこがいいか迷ってる方へ
さらに、仕事で作る請求書に、ハンコが押してあるとクライアントの印象が良くなります。そのため、仕事用の印鑑を用意しておきます。
【参考記事】 ・ 個人向けのインターネットFAXおすすめ6選を比較!料金表付き
・ コワーキングスペースおすすめ19選!エリア、設備、サービス、料金で比較
3. 開業資金
UIデザイナーで独立するにあたって、開業資金は準備しておきたいところです。独立して活動が軌道になるまでに半年から1年ほどの期間がかかる場合もあります。
たとえば、次のようなスケジュールで進んだ場合に、最初の入金にまで6か月かかります。
- 最初の案件を獲得・・・独立後、3か月
- 成果物の制作、納品・・・2か月
- 請求書の作成、入金・・・1か月後(月末締め翌月末払いの場合)
そのため、順調に作業を実施したとしても、6か月ほどは金銭的につらい時期が発生します。さらに、開業に必要な項目は4種類あります。
- 事務所を借りる費用(保証金、敷金、礼金、仲介手数料など)
- 機材・事務用品(パソコン、ソフトウェア、インターネット回線、電話、Fax、文房具)
- ホームページ・名刺
- プライベートの支出(自宅の家賃、水道光熱費、飲食費、生活費など)
なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構によるとWebデザイナーの開業資金は95万円とされています。
上記数値には、半年分の生活費が含まれていないので、200万円以上の貯金があるとより安全に独立できます。
4. 営業方法
フリーランス白書2019によると、フリーランスが仕事を見つける選択肢として、5つの方法が紹介されています。
【出典】 一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書 2019」 P11
それによると、人脈、過去の取引先、Web・SNS、クラウドソーシング、エージェントが挙げられています。
やはり、人脈や取引先から営業をするのが、案件の獲得に繋がりやすいです。ただし、新規のお客様を獲得したいときには、Web・SNS、クラウドソーシングを使うのも一つです。
WebやSNSであれば、広告費を大きくかけなくても、幅広くアプローチすることができます。さらに、クラウドソーシングを使うことで、効率よく案件を獲得し、実績を積み、ポートフォリオに掲載できるようにします。
◆ 人気のクラウドソーシング
なお、フリーランス白書2019によると、年収400万円以上を稼ぐときに、実績に繋がりやすい方法として、エージェントサービスが挙げられています。
フリーランス向けのエージェントサービスのなかには、福利厚生が充実しているサービスや、給与保証をしてくれるサービスもあるので、登録してみるのも一案です。
◆ 人気のエージェントサービス
- クラウドワークステック (福利厚生が充実。週3日、4日の案件もあり)
- Midworks (正社員並みの社会保障。給与保証制度)
5. 開業届
フリーランスが個人事業主として開業するときには、税務署に開業届を提出する必要があります。A4で一枚の書類で、国税庁のホームページあるいは最寄りの税務署に行って、入手できます。
税務署に提出をすると、その場で提出日付が入った収受印を押された控えを渡してもらえます。この控えは、銀行で屋号入りの銀行口座を開設するときに使えるので、大切に保管しておきます。
なお、開業届の提出方法については別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 個人事業主の開業届の入手方法、提出先、期限(いつまで)、費用
6. 営業ツール
フリーランスとして営業をするためには、3つの営業ツールを準備します。
- 名刺
- ポートフォリオ
- ホームページ
名刺を渡す方は、企業の担当者が多いため、ビジネスシーンで使えるようなデザインを心がけます。名刺を作るときには、次の5つの情報を記載します。
- 名前
- 職種
- 電話番号、メールアドレス、住所
- ホームページのURL
- SNSのID(Facebook,Twitter,Instagramなど)
また、これまでの実績をアピールするために、ポートフォリオも準備をしておきたいところです。ポートフォリオとして入れておきたいポイントは5点あります。
- タイトル
- 表紙デザイン
- 略歴
- 実績
- 作品集
そして、名刺と同じくホームページも作り、これまでの実績も掲載しておくと、ネット経由での問合せも発生します。
なお、ホームページを作るときには、独自ドメインで作りたいところです。独自ドメインで作ることにより、検索されやすくなりますし、また信頼感も増します。
7. 見積書
厚生労働省による「雇用類似の働き方に関する検討会」によると、フリーランスの働き方における課題として、作業内容や作業期間、報酬に関するトラブルが挙げられています。
【出典】厚生労働省「雇用類似の働き方に関する検討会」P31
特に、UIデザイナーの仕事は、納品後の修正作業や追加作業が発生しがちです。そのため、修正が続いて、納品が遅れるなど、想定以上の工数が発生する場合があります。
そこで、仕事を受けるときには、事前に見積書を作成して、クライアントと合意しておくとトラブルを回避しやすくなります。例えば、次のようなポイントを明記し、合意しておきます。
- クライアント名
- 商品名、サービス名
- 数量・単価・金額
- 見積書の発行日
- 提出者の氏名、屋号
- 見積書の有効期限
- 備考
とくに、備考欄には、「修正作業は3回までとする」とか「納品後の修正には、別途追加費用が発生します」などの諸条件を記載しておきます。
8. 請求書
無事に納品が済んだら、クライアントに請求書を送付します。請求書は市販のものでも大丈夫ですが、テンプレートなどを使って自作するのも一つです。
なお、請求書を作るときには次の9点を記入します。
- クライアント名
- 商品名、サービス名
- 数量、単価
- 消費税
- 源泉徴収税(法人のクライアントの場合)
- 請求書作成者の氏名あるいは屋号(住所、電話番号)
- 発行日
- 振込先の金融機関名
- 振込の期限
振込期限日を超えても入金が確認できない場合には、クライアントに連絡をします。大抵は、先方の手続きミスであることが多く、入金日を再確認することで、問題なく支払ってもらえます。
なお、源泉徴収税の税額については、国税庁ホームページによると10.21%となっています。
【出典】 国税庁 報酬・料金等の源泉徴収事務
また、参考までに、請求書の作り方やテンプレートは別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 請求書の書き方(個人事業主向けの見本・テンプレートつき)
9. 確定申告
フリーランスは年に1回、確定申告をする必要があります。
確定申告とは、1年の収入や支出を算出し、その収支をもとに所得を確定し、税務署に申告書を提出することです。
確定申告をするときには、7つのステップで作業を行います。
- 開業届を税務署に提出する
- 青色申告承認申請書を税務署に提出する
- 請求書、領収書など必要書類を集める
- 会計ソフトに日々のデータを入力する
- 確定申告の書類を作成する
- 書類を税務署に提出する
- 納税をする
なお、詳細な作業ステップについては、別記事でまとめています。
【参考記事】・ 自営業の経理!ゼロから始める確定申告までの10の作業と便利ソフト【2020年】
10. 開業の挨拶状
開業をしたら、これまで取引のあったお客様や知人に開業の挨拶状を送ります。開業したことを通知することで、知り合いの会社から仕事の依頼を受ける場合もあります。
開業の挨拶状を送るときには、時候の挨拶に続いて、日頃の愛顧に関する感謝と、今後の抱負を伝えます。なお、開業の挨拶状の書き方については、別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 開業の挨拶状 ~書き方と7つの文例~
まとめ
本記事は、UIデザイナーがフリーランスになる方法や手順をご紹介しました。なお、起業に関する情報は別記事でまとめています。
【参考記事】・ 起業前のチェックリスト! 絶対に準備しておきたい15のこと
・ 自営業の始め方!職種や屋号の決め方、開業届、確定申告、税金などの11の知識
・ 自営業の経理!ゼロから始める確定申告までの10の作業と便利ソフト【2020年】
500mailsのFacebookやTwitterでは、起業・副業に役立つ情報を配信しています。 是非「いいね!」をして最新情報をチェックしてください
Writer/編集者: 松田康