株式会社と合同会社を比較した場合、どのような違いがあるのでしょうか。
株主総会や取締役などの組織や、経営の意思決定のスピード、利益の配分の仕方に違いがあります。さらに、会社の設立にかかわる費用や、知名度、役員の任期の期間にも違いがあります。
そこで、株式会社か合同会社を選ぶ前に知っておきたいポイントをまとめました。
本記事は、株式会社と合同会社を比較し、その6つの違いをご紹介します。
1. 株式会社と合同会社を比較する6つのポイント
株式会社と合同会社を比較したところ、次の6つの違いがありました。
- 設立の費用
- 組織と経営方針の決め方
- 代表権と業務の執行権
- 利益の配分の仕方
- 知名度
- 役員の任期の期間
それぞれを詳細にご紹介します。
1.1 設立費用
【結論】
- 株式会社: (書面で定款を作る場合)最低24万円~
- 合同会社: (書面で定款を作る場合)最低10万円~
【比較内容】
株式会社の設立には、資本金が必要となります。資本金とは、会社を運営するうえで、会社に入れておくお金です。
そして、資本金以外に、(1)定款の認証費用(2)定款認証の印紙代(3)登録免許税 などが必要となります。そのため、書面で定款を作る場合、24万円以上の費用が必要となります。
◆ 株式会社の設立に必要な費用
No | 項目 | 書面の定款 |
1 | 定款認証費用 | 約5万円 |
2 | 定款認証印紙代(*1) | 4万円 |
3 | 登録免許税(*2) | 15万円~ |
総額 | 24万円~ |
一方、合同会社でも、株式会社と同様に、資本金が必要となります。そして、資本金以外に、(1)定款の印紙代 (2)設立登記の登録免許税 が必要となります。
なお、株式会社は、定款を作成した後に、公証役場で認証を受ける必要がありますが、合同会社の場合は、作成した定款の認証を受ける必要がありません。
そのため、書面で定款を作る場合、10万円以上の費用が必要となります。
No | 項目 | 書面の定款 |
1 | 定款印紙代(*1) | 4万円 |
2 | 登録免許税(*2) | 6万円~ |
3 | 総額 | 10万円~ |
*1:【出典】 国税庁 印紙税額の一覧表
*2:【出典】 国税庁 登録免許税の税額
なお、株式会社も合同会社も、定款を電子データで提出することで、収入印紙代を抑えられます。費用の削減の仕方については、3. 会社の設立費用の削減 で説明します。
1.2 組織や経営方針の決め方
【結論】
- 株式会社: 株主総会や取締役などの機関を設置する必要がある
- 合同会社: 特に制限はなく、経営者だけで迅速に経営方針を決められる
【比較内容】
株式会社は、株主総会や取締役などの機関を設置する必要があります。(会社法 295条、316条)
- 株主総会とは、会社の基本的な経営方針を決める機関で、会社に出資した株主が集まって、経営方針を決めます。
- 取締役とは、株主総会で決まった経営方針を実行します。
一方、合同会社は設置しなければならない機関は特にないです。会社の意思を決める権限は、原則として全社員にあり、定款の内容によっては、一定のものだけに権限を持たせることもできます。
株主総会を開く必要がないので、経営者だけで迅速に経営方針を決められます。
1.3 代表権と業務の執行権
【結論】
- 株式会社: 会社を代表する権限(代表権)と業務を執行する権限(業務の執行権)がある
- 合同会社: 合同会社に出資した社員が全員、代表権を持つ
【比較内容】
株式会社は、会社を代表する権限(代表権)と業務を執行する権限(業務の執行権)があります。そして、代表取締役は、会社の代表者として対外的な取引などを行う権限があります。
一方、合同会社にも、会社の代表者として代表権を有する人はいます。
ただし、代表取締役などの一部の人が代表権を持つのではなく、原則として、合同会社に出資した社員が全員、代表権を持ちます。
1.4 利益の配分の仕方
【結論】
- 株式会社: 出資した割合で、配当される金額が決まる
- 合同会社: 自由に利益配分を変えられる
【比較内容】
株式会社は、会社に出資した割合に応じて、利益を配分します。そのため、株式を多く持つ人が、多くの利益を得られます。
たとえば、1株に対して50円の配当をする場合、1株もっている人には50円、1,000株持っている人には、50,000円の配当を配分します。
一方、合同会社は、定款によって、利益の配分の仕方を変えられます。
たとえば、定款で「当会社における社員の損益の配分は、毎事業年度末において総社員の同意による定める」といった記載をすることで、柔軟に変えられます。
1.5 知名度
【結論】
- 株式会社: 知名度が高い
- 合同会社: 知名度がやや低い
【比較内容】
上場企業のように、日本の代表的な企業は株式会社が大半です。そのため、株式会社は知名度や信用度が高い傾向にあります。
一方、合同会社は、以前あった有限会社の代わりのような存在で、小さな会社のイメージがあります。そして、株式会社と比べて、知名度が低いという欠点があります。
そのため、融資や他の会社との取引に支障がでる可能性があります。ただし、アップルやAmazonなど、外資系IT大手の日本法人では、合同会社の場合が多く、徐々に知名度が上がっています。
1.6 役員の任期の期間
【結論】
- 株式会社: 役員に任期がある
- 合同会社: 役員に任期がない
【比較内容】
株式会社では、代表取締役などの人気は最大10年間(非公開会社)となっています。(会社法332条第2項)
そのため、任期を満了するたびに、同じ役員が引き続き同じ役職を行う場合でも、手続きが必要となり、書類の作成や、法務局への提出など作業が発生し、またお金も発生します。
一方、合同会社の場合には、代表社員などの役員に任期が定められていないため、変更の手続きも発生しませんし、お金も発生しません。
2. 株式会社と合同会社の比較表
株式会社と合同会社の違いを表形式でまとめました。
株式会社 | 合同会社 | |
設立費用 | 24万円~ | 10万円~ |
組織と意思決定 | 株主総会や取締役などを設置する必要がある | 特に制限はない。 経営者だけで経営方針を決められる |
代表権 | 代表権と業務の執行権がある | 出資した社員が全員が代表権を持つ |
損益の配分 | 出資した割合で、配当される金額が決まる | 自由に利益を配分できる |
知名度 | 高い | 低い |
役員の任期 | 任期がある | 任期がない |
3. 会社の設立費用の削減
株式会社と合同会社を設立するときに、書面で作成した定款を認証してもらうことが多いです。一方、書面ではなく電子化された電子定款を認証してもらうこともできます。
電子定款の場合、書面による定款作成時にかかる収入印紙代4万円がかからないこともあり、設立の費用を抑えたい方がよく使っています。
◆ 電子定款を利用したときの費用
書面の定款 | 電子定款 | |
株式会社 | 25万円~ (1)定款認証費用 約5万円 (2)定款認証印紙代 4万円 (3)登録免許税 15万円~ |
20万円~ (1)定款認証費用 約5万円 (2)定款認証印紙代 0円 (3)登録免許税 15万円~ |
合同会社 | 10万円~ (1)定款印紙代 4万円 (2)登録免許税 6万円~ |
6万円~ (1)定款印紙代 0円 (2)登録免許税 6万円~ |
なお、電子定款を作る場合には、無料で会社設立の書類を作れるサービスを利用すると便利です。
クラウド会計大手のfreeeが提供するツールです。会社設立に必要な書類を無料で作れます。20,000社近い企業が利用しています。
まとめ
本記事は、株式会社と合同会社の違いをご紹介しました。
会社組織に求める内容によって、起業する形態が変わります。
求める内容 | おすすめの形態 |
知名度の高い組織で始めたい | 株式会社 |
安い費用で始めたい | 合同会社 |
柔軟に動ける組織を作りたい | 合同会社 |
なお、起業する前にチェックしておきたいポイントや、開業費用、オフィスの必需品、ホームページの制作費用などを別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 起業前のチェックリスト! 絶対に準備しておきたい15のこと
・ 起業に必要な資金!開業費用の目安と費用削減の7つの方法
・ オフィス必需品!仕事環境を便利にする設備・グッズ11選(備品リスト)
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Writer/編集者: 松田康