イラストレーターが確定申告をするには、どのような手順で進めればいいのでしょうか。
確定申告に必要な書類を集めたり、確定申告に向けた手続きや帳簿の付け方を理解する必要があります。さらに、確定申告に便利なソフトとその使い方を知っておくと、作業がラクになります。
そこで、イラストレーターが確定申告をする前に知っておきたいポイントをまとめました。
本記事は、イラストレーターが確定申告をするための10の作業手順と申告方法を紹介します。
1. 確定申告とは
確定申告とは、年に1回、毎年3月15日までに税務署に対して行う手続きです。
イラストレーターとして独立した場合、個人事業主として自分の税金を計算して、税務署に申告し、所得税を国に支払う必要があります。
サラリーマンは、会社が給料から天引きしてくれるため、税金のことを意識する必要はありません。しかし、独立あるいは副業をしている場合、収入や経費は、自分にしかわかりません。
そのため、帳簿をつけて、収入と支出を計算して、自分で申告する必要があります。
では、具体的にどのような準備や手続きが必要か、説明します。
2. 確定申告までに必要な手続き
イラストレーターが確定申告をするのに、必要な作業ステップをまとめました。
- 個人事業の開業届を提出する
- (青色申告する場合)青色申告の申請書を提出する
- 事業用の銀行口座を用意する
- 請求書や領収書を整理し、保管する
- 所得控除に関する書類を集める
- 記帳をする
- 会計ソフトにデータを入力する
- 確定申告書の手引きを入手する
- 会計ソフトで青色申告決算書を作る
- 申告書類を提出する
それぞれを詳細にご紹介します。
2.1 開業届
イラストレーターがフリーランスとして仕事を始めたら、税務署に開業届を提出します。開業届は、最寄りの税務署にある場合もありますし、国税庁のホームページでダウンロードできます。
なお、開業届を届けるときには、税務署に持参します。その場で、提出日付がはいった収受印を押された控えをもらえます。
開業届けの控えは、今後、銀行で屋号入りの口座を作る場合や、金融機関から融資をもらう場合などに使います。なお、開業届けの入手方法や提出先は別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 個人事業主の開業届の入手方法、提出先、期限(いつまで)、費用
2.2 青色申告申請書
確定申告は青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告と白色申告の違いは、帳簿の付け方が複雑か簡単かです。
青色申告は、白色申告と比べて特典があり、最大65万円分を経費として追加できます。(e-Taxという電子申告の仕組みで申告書を提出するときは65万円控除されます。通常の申告の場合は、55万円の控除となります。)
国税庁のホームページでは、青色申告、白色申告の両パターンでの税額をシュミレーションしており、節税できる金額も算出できます。(例えば、年収600万の場合、197,800円の節税)
【出典】 国税庁ホームページ 青色申告のすすめ P5
青色申告をする際に、所得税の青色申告承認申請書を提出します。
開業届と同じく簡単な書類です。そのため、開業届と一緒に税務署に提出します。詳細の書き方は、別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 個人事業主の開業届の入手方法、提出先、期限(いつまで)、費用
なお、青色申告をする場合には、初心者向けの会計ソフトが便利で、簡単に青色申告書類を作れます。(作り方は後述します)
また、白色申告を選んだ場合でも、帳簿を付けることが義務付けられています。その場合でも、便利なソフトがあります。無料で使えるソフトがあるので、試してみることをオススメします。
【参考記事】 ・ 白色申告のソフトを比較!おすすめのソフト3選を徹底解説
2.3 事業用の口座
確定申告の作業をすすめるにあたって、仕事上のお金の出入りを管理する必要があります。
フリーランスは、個人で仕事をするので、プライベートと仕事の区分が曖昧になりがちです。そのため、同じ通帳で管理していると、取引明細から、これは仕事、これはプライベートと判断していくのは面倒です。
そこで、プライベートとは別に、事業用の通帳やクレジットカードを用意すると便利です。具体的には、次の4つのステップを踏みます。
- 仕事専用の銀行口座を作ります
- 仕事専用のクレジットカードを作ります(支払いは仕事専用の銀行口座とします)
- プライベートの口座から仕事専用の口座に資金を移動します
- クライアントからの振込を仕事専用の通帳にまとめます
仕事専用の銀行口座を開設するときは、個人事業主向けの口座がおすすめです。
- GMOあおぞらネット銀行 (屋号付きの銀行口座を作れます。)
- PayPay銀行 (銀行融資も受けられ、ネットで完結できます。)
- 住信SBIネット銀行 (最短即日でオンライン口座を作れます。)
さらに、支払いの管理については、仕事用のクレジットカードや通帳を利用します。
【参考記事】・ フリーランス向けのクレジットカードおすすめ12選!還元率、審査、サービス
・ 個人事業主・フリーランスにおすすめの銀行口座6選!
2.4 請求書や領収書の保管
請求書や領収書などは、お金を支払ったことを証明する文書であり、確定申告に必要な書類となります。そのため、紛失しないようにファイリングをしておきます。
ファイリングするときには、2つのポイントをおさえます
- 領収書の日付をもとに、月別に分類します。
- 茶封筒を用意して、表に「2023年7月分」などと書いて、発生した領収書を保管します
そして、確定申告を終えたら、段ボールなどに入れて保管します。保管期間は5年以上となります。
【出典】 国税庁ホームページ
なお、請求書については、テンプレートをご用意しました。
請求書や領収書の書き方については、別記事でまとめています。
【参考記事】・ 請求書の書き方(個人事業主向けの見本・テンプレートつき)
・ 領収書の書き方と見本、収入印紙のルール!知らないと恥ずかしい7つの知識
2.5 所得控除に関する書類の収集
所得税は、所得すべての課税されるのではなく、課税対象の金額を減らすことができます。例えば、配偶者に関する控除や、医療費に関する控除、社会保険料に関する控除などがあります。
【出典】 国税庁ホームページ 所得控除のあらまし
そこで、確定申告の所得控除で使える書類を集めて、保管しておきます。
◆ 社会保険料控除証明書
確定申告の時期になると、日本年金機構から送付されますので、当資料を提出します。社会保険料を支払った場合に、その支払額の全額が社会保険料控除の対象となります。
なお、控除の対象となるのは1月~12月に「実際に支払った」金額です。
【出典】 国税庁ホームページ
◆ 生命保険料控除証明書
生命保険料を支払った場合には、一定の金額を控除対象とすることができます。年末に生命保険会社から生命保険料控除証明書が送付されるので、保管し、確定申告書に添付します。
【出典】 大同生命ホームページ 生命保険料控除制度に関するご案内
【出典】 国税庁ホームページ
上記以外にも、次のような内容が控除されます。場合によって書類を用意する必要があるので、国税庁のページをご覧になってください。
【出典】 国税庁ホームページ
2.6 記帳
収入や支出に関わる取引について、日付や金額などの必要な情報を記録していきます。会計ソフトに入力をすると作業がラクになります。データを入力すると、1年間の事業所得が計算できます。
イラストレーターの仕事で必要な経費として、次のような内容が挙げられます。
- 材料代(画材、紙など)
- 交通費
- 打合せのための食事代
- 印鑑、名刺の作成費用
- ウェブサイトの制作費用
- 文房具代
- 通信費(携帯電話、インターネット回線)
- 資料用の書籍代
なお、通常の食事代は経費にできないため、仕事関係者との食事代、交際費はきちんと説明できるように記録をとります。
2.7 会計ソフト
前述しましたが、確定申告をする際には、帳簿を付ける必要があります。
帳簿を付けるときには、クラウド化された会計ソフトを利用すると便利です。従来までの高い会計ソフトと違い、(クラウドで使える)会計ソフトは、月額数千円で利用できます。
さらに、クラウドの会計ソフトは、銀行口座やクレジットカード、amazonなどのネット通販の購入情報とデータが連携できるので、自動的に帳簿に取りこんでくれます。
◆ MFクラウド会計のデータ連携画面
そのため、クラウド会計ソフトを利用することで、作業効率が上がります。なお、中小企業庁の調査でも「クラウド会計ソフトの導入企業の78.8%が、経理の業務時間が削減」と報告しています。
【出典】 中小企業庁 クラウド会計ソフトの活用
なお、人気のある会計ソフトは3つあります。
- freee (初心者向きです)
- MFクラウド確定申告 (玄人向きで、会計データが入力しやすいです)
- 弥生会計オンライン (無料です)
それぞれの詳細は、別記事でまとめています。試用版もあるので、確認してみてください。
【参考記事】 ・ freeeと弥生会計オンラインを比較!選ぶ前に知りたい3つの違い
・ freeeとMFクラウド(マネーフォワード)を徹底比較!
また、前章でも紹介しましたが、白色申告で行う場合には、白色申告用の会計ソフトもあります。
別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 白色申告のソフトを比較!おすすめのソフト3選を徹底解説
2.8 確定申告書の手引き
税金に関する法律は毎年更新されるため、確定申告をする前に、申告する年の法律にあったルールで申告をする必要があります。
そこで、国税庁のホームページにある確定申告書の手引きを入手します。
申告書の提出方法や納税の方法、確定申告が必要な方の条件、申告書の書き方などが、詳細に書かれているので、一読したいところです。
2.9 確定申告書類の作成
前述したクラウド会計ソフトでは、確定申告書類を作成する機能も付いています。一問一答で、質問に答えていくだけで、確定申告に関する書類が作れるので便利です。
たとえば、freeeの場合には、Q&Aを答えることで、確定申告の準備を進められます。
また、MFクラウド確定申告の場合にも、確定申告を支援する画面があります。
さらに、インターネット上で電子申告できるe-Tax用のデータも自動で作成できます。e-Taxの詳細は、国税庁ホームページをご覧ください。
同じく、freeeや弥生会計オンラインにも同様の機能があるので、ぜひご確認ください。
【参考記事】 ・ freeeと弥生会計オンラインを比較!選ぶ前に知りたい3つの違い
・ freeeとMFクラウド(マネーフォワード)を徹底比較!
2.10 確定申告書の提出
確定申告書類は、3つの方法で提出できます。(*1)
- 税務署に持参する
- 税務署に郵便で送付する
- e-Taxで申告する
税務署に出かけて申告をするのが一般的です。不明点がある場合は、職員の指導を受けながら作れます。なお、郵便の場合には、通信日付印が提出日となります。そのため、通信日付印が申告期限内となるよう、送付します。
*1: 国税庁ホームページ
まとめ
本記事は、イラストレーターが確定申告をするための10の作業手順と申告方法などをご紹介しました。おさらいをすると、次の手順で進めます。
- 個人事業の開業届を提出する
- (青色申告する場合)青色申告の申請書を提出する
- 事業用の銀行口座を用意する
- 請求書や領収書を整理し、保管する
- 所得控除に関する書類を集める
- 記帳をする
- 会計ソフトにデータを入力する(freee、MFクラウド確定申告、弥生会計オンライン)
- 確定申告書の手引きを入手する(国税庁のホームページ 確定申告書の手引き)
- 会計ソフトで青色申告決算書を作る
- 申告書類を提出する
なお、経理の作業に役立つ情報を別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 現金出納帳の書き方と記入方法!見本やテンプレート、便利なソフトを紹介!
・ 領収書の書き方と見本、収入印紙のルール!知らないと恥ずかしい7つの知識
・ 請求書のクラウドサービスを比較!5つのポイントで検証
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Writer/編集者: 松田康