自営業を始めるには、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか。
職種や業種を決める。屋号を決めて、開業届を提出する。印鑑を用意し、銀行口座を作る。名刺やチラシを用意する。税金や確定申告の準備をするなど、様々な手続きを押さえる必要があります。
そこで、自営業を始めるまでに、知っておきたい知識や作業ステップ、やり方をまとめました。
本記事は、自営業の始めるのに必要なこと、確定申告の仕方などをご紹介します。
自営業を始める11のポイント
自営業を始めるのに必要な作業ステップ、手続き、やり方をまとめました。
- 職種(業種)を決める
- 屋号を決める
- 事業計画書を作る
- 開業に必要なものを準備する
- 開業資金を用意する
- 開業届を提出する
- 退職手続きをし、健康保険に加入をする
- 販促活動をする
- 取引書類を用意する
- 帳簿を付ける
- 確定申告を行う
それぞれを詳細にご紹介します。
1. 職種
自営業を始めるにあたって、どのような業種で始めるべきかを決める前にチェックしたいポイントをまとめました。
◆ 自営業で業種を選ぶ際の留意点
チェックポイント | 具体的なアクション |
---|---|
市場の需要 | 市場調査を行なう |
競合分析 | 競合の強みと弱みを分析する |
法規制と許認可 | 必要な許認可や規制を調べる |
ライフスタイル | ライフスタイルに合った業種を選ぶ |
リスク管理 | リスク評価を行い、対策を計画する |
事業計画の策定 | 事業計画書を作り、戦略を明確にする |
また、市場調査を行うときに、便利なリサーチツールをご紹介します。
ツール名 | 利用方法 |
---|---|
Googleトレンド | キーワードの人気度を分析する |
見える化エンジン | ソーシャルメディア上のトピックの人気と感情を分析する |
日本能率協会総合研究所 | 業界の市場規模、成長予測、消費者動向を分析する |
とくに、Googleトレンドは無料で利用でき、リアルタイムで市場の動向を分析できます。
自分の興味のある分野のキーワードを入力すると、その人気度を調べることができます。
具体的な業種を考慮する際には、店舗の有無によって業種が分かれることを留意してください。
◆ 自営業の職種(業種)
店舗 | 職種(業種) |
必要 | レストラン、居酒屋、雑貨店、コンビニ、サロン、美容師、マッサージ、学習塾 |
不要 | デザイナー、イラストレーター、ネットショップ、システムエンジニア |
まず、レストランやカフェ、雑貨店など、店舗を持つ業種があります。店舗や事務所を持つと、多額の初期費用が発生します。事業が軌道にのるまで先が見通せない個人事業主は、フランチャイズなどを利用して、早期に利益を生み出す工夫が必要です。
【参考記事】 ・ 起業におすすめのフランチャイズ12選!年収、成功率、開業資金、副業OKなど
一方で、ネットショップや移動販売、デザイナーやイラストレーターなど、無店舗で始められる業種もあります。副業から始めて、事業が軌道に乗ったら独立する方法は一つの選択肢です。
なお、ネットショップの始め方や、デザイナー・イラストレーターでの独立の仕方、移動販売の仕方などを別記事でまとめています。
【参考記事】・ イラストレーターの独立!イラストの仕事の取り方や依頼の受け方、開業届など
・ UIデザイナーがフリーランスになる手順!開業資金や営業方法、確定申告
・ 移動販売で開業する手順!開業費用や資格、売れる物など8つの基礎知識
・ 個人で輸入ビジネスを始める手順!起業や輸入販売の仕方を解説!
2. 屋号
屋号を付けるときには、わかりやすく、覚えやすい名前にすると、集客につながります。次の3つのポイントを押さえます。
- 覚えやすい名前にする
- 読みやすい名前にする
- 事業内容がわかるような名前にする
基本的には、自由に名前を付けられますが、同じ地域で似ている商号があると、トラブルの元となります。そこで、特許情報プラットフォームで商標を検索できるので、事前にチェックします。
自分の考えている名前を入力して検索ボタンを押すと、類似の商標が表示されます。
なお、屋号はあくまで個人事業主なので、「〇〇株式会社」「〇〇銀行」のような屋号名を付けられない点は注意が必要です。
3. 事業計画書
個人事業を始めるにあたって、計画に抜け漏れがないかを確認するために、事業計画書を作ると失敗のリスクを抑えられます。販売計画や仕入計画、人員計画、業績の見通しなどを検討します。
事業計画書では、次の6項目は検討したいところです。
- 事業名と業種
- 開業の目的や動機
- 取り扱う商品やサービスの内容とセールスポイント
- 対象となるマーケットや販売先
- 開業に必要な資金と、その調達方法
- 開業後の事業の見通し(売上、仕入れ、経費、利益)
なお、日本政策金融公庫が掲載している創業計画書が参考になります。記入例なども掲載しているので、参考にして作ってみます。
4. 開業に必要なもの
開業や起業をするのに必要なものをリストアップし、準備をすすめていきます。事業用の印鑑や銀行口座、クレジットカードを用意します。
さらに、店舗やオフィスを決め、インターネット回線を準備します。次に、販促活動用に、ショップカードや名刺、チラシ、パンフレット、ホームページなどを用意します。
なお、開業に必要なものと、その選び方や注意点については、別記事でまとめています。
◆ 開業に必要なもの(選び方)
開業に必要なもの | 選び方、作り方、詳細説明 |
事業用の印鑑 | 印鑑の作成におすすめのサイト8選!料金、書体、材質 |
事業用の銀行口座 | 個人事業主・フリーランスにおすすめの銀行口座6選! |
オフィス | コワーキングスペースおすすめ17選!エリア、設備、サービス、料金 |
備品・グッズ | オフィス必需品!仕事環境を便利にする設備・グッズ11選(備品リスト) |
インターネット回線 | インターネット光回線おすすめ5選の比較!料金表付き |
レジ | エアレジとスクエアを比較!選ぶ前に知りたい5つの違い |
電話回線 | クラウドPBXおすすめ11選を比較!機能、サービス、料金で検証 |
名刺 | 名刺のテンプレート5選!パワーポイントで簡単に作る方法! |
ショップカード | ショップカード・名刺の作り方(見本付き) |
チラシ | チラシを作成するコツ!インパクトのあるチラシの作り方! |
パンフレット | パンフレットの作り方!便利なテンプレート6選! |
ホームページ | ホームページの制作・作成料金!相場と費用の内訳(料金表付き) |
起業するにあたって、必要なものをチェックリスト形式でまとめています。
【参考記事】 ・ 起業前のチェックリスト! 絶対に準備しておきたい14のこと
また、電話の受付を代行してもらいたい方は、別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 個人向けの電話代行サービスおすすめ5選を比較!料金表付き
5. 開業資金
開業をするために必要な資金を用意します。開業直後は売上があがらないのに、出費が続くことが多いです。そのため、開業資金を抑えて、できるだけ余剰資金を確保するようにします。
自己資金が足りない場合等には、金融機関からの融資を検討する必要があります。融資を受けるときに検討したいのが、日本政策金融金庫です。
中小企業を支援するために設立、運営されている日本政策金融金庫は、創業者向けに融資をする制度があります。
種類 | 利用できる方 | 融資限度額 | 返済期間 |
新規開業資金 | 新たに事業を始める方 | 7,200万円 | 20年以内(設備資金) 7年以内(運転資金) |
女性、若者/シニア起業家支援資金 | 女性または35歳未満か55歳以上の方。 新たに事業を始める方。 | 7,200万円 | 20年以内(設備資金) 7年以内(運転資金) |
【出典】 日本政策金融金庫 新規開業資金
【出典】 女性、若者/シニア起業家支援資金
6. 届け出
事業を始める個人事業主は、最初に開業届を税務署に提出しなければなりません。提出期限は、事業を開始した日から1か月以内です。
そして、開業届は、国税庁のホームページあるいは最寄りの税務署で入手できます。
開業届を作ったら、控えのコピーを取り、原本と一緒に提出します。そして、開業届の控えに収受印をもらいます。控えは、銀行口座を作るときに、求められる場合があるため、保管します。
なお、開業にまつわる書類を、ネットで作れるサービスがあります。
クラウド会計ソフトのfreee社が提供するサービスで、個人事業の開業手続きが、無料で簡単にできるサービスです。
なお、開業届の入手方法や提出先、期限などは別記事でまとめています。
【参考記事】・ 個人事業主の開業届の入手方法、提出先、期限(いつまで)、費用
7. 退職、保険の加入
サラリーマンから自営業になるにあたって、会社を円満退社する必要があります。周囲に迷惑をかけないように、スケジュールを立てて、進めていく必要があります。
そこで、次のようなスケジュールで、退社に向けた手続きを行います。
- 3か月前~2か月前: 上司に相談
- 2か月前~1か月前: 退職届の提出
- 1か月前~退社: 引継ぎ書の作成、取引先への後任の紹介
会社を退社して、個人事業主になると、これまでの保険制度から脱退します。ただし、20歳以上の日本国民は、保険、年金制度に加入することが義務付けられています。
【出典】 日本年金機構
そこで、個人事業主の場合は国民健康保険と国民年金に加入することになります。年金や健康保険の切り替えは、退職後、14日以内に市区町村役場で手続きをします。
ただ、会社員の厚生年金と比べて、国民年金は受給額が少ないので、国民年金に加えて、国民年金基金に加入するのも一案です。
8. 営業活動
開業するにあたって、集客が重要なテーマとなります。
そこで、早めに営業活動をして、集客の準備を進めます。知人や近隣の方に、メールやハガキ、チラシなどを送り、広く事業を知ってもらえるように工夫します。
また、これまで培ってきた知人に挨拶状を送ったり、異業種交流会などで名刺を配ったり、ホームページやSNSなどを駆使して、認知度を高めます。
◆営業活動の種類
営業手法 | 具体的な方法 |
挨拶状 | 開業の挨拶状 ~書き方と7つの文例~ |
ダイレクトメール | ダイレクトメール(DM)の文例!お客様を呼び寄せる方法 |
ホームページ | 集客できるホームページの作り方!デザインやレイアウト、構成やツールを紹介 |
チラシ | チラシのタイトルの作り方!グッと心を掴むキーワードと配置方法 |
集客の仕方については、別記事でまとめています。
【参考記事】 ・ 新規顧客を獲得する20の方法
・ 集客のアイデア集 (成功する集客企画9選)
9. 取引書類
事業を始めると、様々な企業と取引をするようになります。そして、その取引の記録を残していく必要があります。代表的な書類としては、見積書、納品書、請求書、領収書があります。
書類 | 書類の作り方・説明 |
見積書 | 見積書の書き方!他社に勝つ見積書を作る方法(テンプレート付き) |
納品書 | 納品書の書き方と見本!初心者でも、すぐに使えるテンプレート付き |
請求書 | 請求書の書き方(個人事業主向けの見本・テンプレートつき) |
領収書 | 領収書の書き方と見本、収入印紙のルール!知らないと恥ずかしい7つの知識 |
◆ 納品書のテンプレート
◆ 請求書のテンプレート
◆ 領収書のテンプレート
それぞれの取引書類は一定期間保管する義務があります。国税庁のホームページでは、請求書、見積書、契約書、納品書は5年間の保持が求められています。
【出典】 国税庁ホームページ 記帳や文書保存等
10. 帳簿の作成
事業を開始したら、経理の作業を行う必要があります。経理の作業は、3種類の業務があり、日次業務、月次業務、年次業務とあります。
大まかな作業内容と、作る資料をまとめました。
タイミング | 作業内容 | 作る資料(帳簿) |
日次 | 領収書、請求書の整理、保管 | – |
現金出納帳の記入 | 現金出納帳 | |
銀行預金の残高確認 | 預金出納帳 | |
月次 | 請求書の作成 | 売掛帳 |
仕入代金の支払い | 買掛帳 | |
経費の支払い | 経費帳 | |
従業員の給与の支払い | 賃金台帳 | |
年次 | 決算書の作成 | – |
年末調整 | – | |
確定申告 | – |
◆ 現金出納帳
現金出納帳テンプレート(マイクロソフト社)をダウンロードする
なお、現金出納帳の書き方や、経理の作業の仕方については、別記事でまとめています。
【参考記事】・ 現金出納帳の書き方と記入方法!見本やテンプレート、便利なソフトを紹介!
・ 自営業の経理!ゼロから始める確定申告までの10の作業と便利ソフト
11. 確定申告
個人事業主が払う税金は最低4種類あります。
- 所得税・・・1年間の利益を確定してから、申告納税します。
- 事業税・・・指定された事業ごとに、一定の税率がかかります。都道府県税事務所から通知が来た場合に、納税します
- 住民税・・・市区町村からの通知にしたがって納税します。
- 消費税・・・自分で計算して、申告・納税します。
- その他(固定資産税など)
所得税は自分で税額を決定し、納税しなければなりません。確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告では、最大65万円の控除が使えます。
そのため、節税をして利益を確保するためには、青色申告を選びたいところです。なお、会計の知識に自信のない方でも、会計ソフトを利用することで、自分で確定申告の書類を作れます。
具体的な作業の手順、会計ソフトの選び方、使い方は別記事でまとめています。
【参考記事】 自営業の経理!ゼロから始める確定申告までの10の作業と便利ソフト
消費税は、基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合、納税する必要があります。
【出典】 国税庁 消費税の仕組み
まとめ
本記事は、自営業の始め方と必要なこと、確定申告の仕方などをご紹介しました。おさらいをすると、次の手順で進めます。
- 職種(業種)を決める
- 屋号を決める
- 事業計画書を作る
- 開業に必要なものを準備する
- 開業資金を用意する
- 開業届を提出する
- 退職手続きをし、健康保険に加入をする
- 販促活動をする
- 取引書類を用意する
- 帳簿を付ける
- 確定申告を行う
なお、会計ソフトの選び方や、資金調達の仕方については、別記事でまとめています。
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Writer/編集者: 松田康